依頼。こだわりの茶を急須で出したい。良い居酒屋からの相談でした。
前提。良い茶ほど、適温があります。たとえば70℃前後で淹れるべき茶を熱湯で淹れると、苦みが立ちます。急須の提供は、温度を決めることから始まります。
その手前の問い。私たちはまず、そもそも急須を出すべきかから一緒に考えました。居酒屋の客単価は、ドリンクの数で大きく変わります。急須の茶は本来四煎、五煎と飲めますが、一杯の急須で長く飲まれると、席の単価は上がりません。しかも急須一杯の値付けは600〜800円が現実的で、1,000円は取りにくい。注ぐだけで提供できるノンアルコールドリンクの方が、収益だけを見れば良い可能性もあります。ここは収益の問題であると同時に、どういう店でありたいかというブランドの問題です。この店は、急須を出すことを選びました。
設計。席数を考慮し、温度調整のできるケトルを提案しました。一煎目は店側が淹れて提供する。二煎目は卓上のポットで、お客自身に淹れてもらう。そして三煎目は出しません。二煎で完結させ、二煎目の後に「三杯目はいかがですか」と次のドリンクを伺うところまでを、オペレーションに組み込みました。
捨てた選択肢。三煎目に炒り玄米を出し、お客の急須に入れて玄米茶として飲んでもらう案がありました。体験としては面白い。しかし三煎目まで引き延ばすことは、ドリンク数で単価が決まるこの業態の構造と衝突します。体験を一つ捨てて、単価の構造を守りました。